梅雨や台風の季節がやってくる。全国初の特別警報が発令された一昨年の台風18号や2年連続で発生した福知山市の水害など、京滋でも水による甚大な被害が相次ぐ。行政による治水対策はもちろん重要だが、いざという時には私たち自身の判断が命を守ることにつながる。水害の特徴をつかみ、その場で起きている情報を把握したうえで、状況に合わせた行動を取ることが欠かせない。

ハザードマップ確認を

 「避難とは文字通り、難を避けること。水害では、難を把握して水に巻き込まれない行動をすることが基本的な考えとなる」と京都大防災研究所の牧紀男教授(防災学)は指摘する。

 そのために、住んでいる場所にどのような危険があるのかを知り、警報や避難情報に接する必要がある。やっておきたいのは、市区町村単位で作成されているハザードマップの確認だ。予想される浸水の深さや身近な川の危険水位、土砂災害の可能性などが分かる。牧教授は「雨の季節が訪れる前に家族でハザードマップを見て、避難場所や避難経路を確認すると同時に対処の仕方を考えておいてほしい」と話す。

 では、どのような行動が求められるのか。避難は何より浸水前にすべきだ。指定された避難場所や離れた知人宅などに逃げる「水平避難」と、自宅の2階など高いところに上がる「垂直避難」の2種類がある。

 想定される浸水の深さが3メートル未満であれば、1階の浸水にとどまる。川のようになった道を歩いて溝などに落ちる危険を冒して避難所へ行くのなら、垂直避難の方が安全は確保できる。2009年にあった兵庫県佐用町の豪雨では20人が亡くなったが、冠水してから逃げようとした多くの人が犠牲になった。外に出ず2階にいた人は無事だった。

 堤防近くなら決壊で家ごと流され、山の麓なら土砂災害に遭う危険性がある。この場合は迷わずに水平避難をした方がよい。

 避難中や外出時に巻き込まれそうになったら、▽大雨時は河川には近づかない▽小川や側溝の流れが激しい時は渡らない▽現在地が降っていなくても、河川上流の降雨で急激に水位が上がるため、大雨注意報の発令時や上流側に発達した雨雲がある時は河川から離れる▽浸水している時はマンホールや側溝には近づかない-ことに気をつけたい。

 局地的な集中豪雨では行政の避難情報が間に合わない。避難勧告が出ていなくても、身の危険を感じたら自主避難をすることだ。

正確な状況把握 重要

 適切な判断をするため、水害の種類や行政などが出す情報の意味をあらためて確認しておこう。

 水害の発生では主に二つの原因が考えられる。一つは台風。長時間にわたり大雨が降り、桂川や由良川など大きな川の増水が懸念される。氾濫すれば広範囲が浸水し、水が引くのに時間がかかる。事前に進路や規模などの情報に接することができるのが特徴だ。

 もう一つは短時間に大量の雨が降る集中豪雨で、台風と違って早い段階での予測が難しい。昨年の福知山市の水害や2012年の府南部豪雨のように、小さな川や内水があふれる。

 流域面積が大きい河川については洪水予報がある。危険水位に達したことを示す「氾濫危険情報」など4段階で発表される。他にも、避難情報を発令する目安の水位を設定する「水位周知河川」や自治体の防災活動のため情報を提供する「水防警報河川」が指定されており、身近な河川の水位に注意すべきだ。

 避難情報は「避難準備情報」「避難勧告」「避難指示」と順に、より強くなっていく。一昨年の台風18号では、桂川があふれる恐れが強まり避難指示が出ているにもかかわらず、天候が回復したと避難所から帰宅する人が目立った。正確な情報に基づかない安易な自己判断は危険につながる。

 各種の情報はテレビのニュースやデータ放送、ラジオを逐一チェックしよう。京都府ホームページ(HP)のトップにある「きょうと危機管理WEB」をはじめ、気象庁や各市町村のHPに災害情報は掲載される。雨量や河川の水位、警報・注意報の有無など、詳細な情報を入手できる。府の「防災・防犯情報メール配信システム」や各自治体が発信するメールサービスに登録すれば、外出先などで情報が得られる。避難情報を広報車や防災行政無線で伝える地域もあり、情報を入手する手段を日ごろから気にかけたい。

【2015年05月26日(火)付京都新聞朝刊より】