大きな災害が起きると、真っ先に心配になるのが家族や友人の無事だ。電話やメールがつながらないと不安は増幅し、多くの負傷者が救急搬送されている病院や消防に問い合わせが殺到する。行方不明者の氏名公表について各地の対応が割れる一方、東日本大震災ではインターネットを活用した安否確認の新しい仕組みが役立った。

不明者のプライバシー 各地で公表非公表割れる

京都市は、市地域防災計画に基づき、安否確認の問い合わせに対応する専用窓口を設置し、専用班の職員が電話で応じるとしている。各避難所では、運営協議会が避難者名簿を作り、入り口などに掲示版を設けて避難者の氏名を公表する方針。その場合、避難者の意思を確認する方針という。

 各地の被災地では、行方不明者の氏名公表をめぐり、自治体の公表・非公表やタイミングの判断が分かれている。安否情報は災害の発生直後、最もニーズが高く、公表によって多くの情報が集まり、効果的な捜索につながる利点がある。一方、個人情報保護をうたう法や条例との間で悩み、昨夏の関東・東北豪雨での茨城県常総市のように、安否不明者の氏名を公表しないケースもあった。

 個人情報保護法や多くの自治体の条例では、原則として、本人の同意を得ずに氏名などを第三者に提供できない。しかし、災害時など「生命、身体、財産の安全を守るため緊急の場合」は例外としている。

京都市 夏までに基準を策定 意思確認し氏名掲示

 京都市は昨年12月、内部検討会を設置し、公表基準の検討を始めたが、市防災危機管理室は「災害だからと言って、すぐに例外規定が適用できるわけではない。公益性と個人情報保護の観点を考慮しながら判断する」とする。今夏までに公表する場合の時期やドメスティックバイオレンス(DV)被害者への対応などを議論し、公表の範囲やケースを決める。

 過去の災害時では、市民や遠方にいる親族らから、自治体や病院などに、搬送状況や安否確認の問い合わせが殺到し、混乱が生じた。

 病院に搬送された負傷者について、市消防局は災害の規模に応じて、市民や報道機関に対応する広報班を立ち上げる。問い合わせ人が搬送者の親族と確認できれば、搬送の有無や搬送先の病院を伝える考え。担当者は「身内の死に目に会えないといったケースが出ないよう、最大限配慮したい」としている。

府警 専門ダイヤル設置

 災害の安否確認は、「無事」という安心できる情報と、死亡者名や重傷者リストといった悲報と、両輪で成り立っている。遺体の身元確認というつらい仕事を担うのが警察だ。

 京都府警は、東日本大震災を受けて2012年12月に策定した危機事象警備計画に基づき、大規模災害発生時に「行方不明者相談ダイヤル」を府警本部に設置し、家族らの問い合わせに応じる。府内25警察署でも窓口を設ける。

 家族らへの個別対応とは別に、届け出た人の同意と立場が確認できれば、行方不明者の氏名も公表する方針だ。

 府警のホームページや報道機関への情報提供、避難所への掲出などを通じ、早期発見に向けた情報確保に努めるという。

 府警警備1課危機管理対策室は「公表のタイミングや方法は、災害規模などに応じて検討する」としている。

=おわり=

【2016年3月22日(火)付京都新聞朝刊より】