大規模災害の際、食事や避難場所とともに、トイレの確保は最重要の課題だ。阪神大震災や東日本大震災などで、被災地が断水となり、家庭や公的施設のトイレが使えず、深刻な事態を伝え聞いた人も多いのではないか。避難者がトイレに行くのを我慢したり、行かずに済むよう食事や水分補給を控えたりし、体力低下や脱水症状を招く悪循環もあったという。トイレをどう備えればいいのだろうか。
マンホール式 整備進む 男女区分けや防犯課題
京都市伏見区の藤城学区の住民約350人が参加した総合防災訓練が15日、藤城小で行われた。高齢者や親子連れも多く、段ボール製の簡易トイレや、下水道に直結するマンホールトイレの個室部分の組み立てを体験した。参加者たちは「被災地で困るのはトイレと聞く。こればかりは辛抱できないから」と言い、真剣に取り組んだ。
災害時には一体、どのくらいのトイレが必要なのか。南海トラフ地震を見据え、中央防災会議は、発生から4日分の携帯・簡易トイレの必要量について、京都府は約89万回分、滋賀県約49万回分と試算。内閣府のワーキンググループは▽発生当初は避難者約50人に1基▽避難が長期化する場合は約20人に1基-と、仮設トイレなどの確保の目安を示す。
府内の自治体は、仮設トイレなど少なくとも約6300基、滋賀県内は約千基を設置・備蓄している。中でも整備が進むのがマンホールトイレだ。国土交通省の補助で2006年度から全国で設置が始まり、市内では京都御苑(上京区)や西京極総合運動公園(右京区)など計26カ所に185基、府内では1276基がある。
京都市上下水道局によると、マンホールトイレは阪神大震災規模の地震に耐えられる公共下水道につなげている。災害発生時にふたを開け、鉄板を敷き、個室部分となるテントを組み立て、併設する雨水貯水槽の水を利用する。一基で一日120人分に対応でき、市内4カ所の処理場などで浄化する仕組みだ。
ただ、テントの間隔は狭く、男女の区分けや防犯対策、夜間照明用の電源が必要な上、「1対3が適当」とされる男女比率をどう確保するかといった課題もある。
また、市は、テントの設置機材990セットを備蓄するが、下部構造の敷設場所26カ所のうち、併設して保管しているのはわずか3カ所。
住民からは「せっかく下部構造ができていても、テント機材がなければ、いざという時に使えないのでは」と懸念の声が聞かれる。
市防災危機管理室は「順次、分散して備蓄を進めたい」とし、上下水道局は歩道のマンホール173カ所も災害用トイレに使えるよう準備している。
携帯用の備蓄も有効
最近では、ホームセンターやドラッグストアなどで、携帯用トイレや簡易トイレを購入できる。
日本トイレ協会(東京都)は、「一人当たり、10~20個ほど家庭で常備しておけば、インフラの復旧まで対応できる」と、備えを呼び掛けている。
携帯用は手軽なサイズのため、車やエレベーター、通勤電車内に閉じ込められることも想定し、かばんなどに入れておくのも有効だろう。
【2015年10月27日(火)付京都新聞朝刊より】